ツキヒコのこだわり



着やすい寸法

昔、着物のサイズは縫う人(= 母親・自分)が生活の中で試行錯誤しながら決めていくものでした。
しかし昨今では、測るのは身長と裄とヒップだけ。割り出す場合がほとんどです。

この方法は、少しでも簡単に・少しでもクレームが発生しないようにと作られた採寸方法です。
だから、着やすさよりも利益優先。着られれば良い。
せっかく仕立てたのに、もらいものの着物より着にくいなんてことも多々あります。

ひと昔前は、誂えといえば、ほとんど振袖や留袖などの「タンスの着物」でしたから、それでも問題はありませんでした。
しかし今は縫える人が減り、木綿などの「着る着物」も誂えてもらう時代
着やすさは何よりも重要なハズなんですが、そういう採寸ができる店はほとんどありません。

当店では、これを非常に大きな問題ととらえています。
お客様の着やすさを、何よりも大切にしたいのです。
せっかくお仕立てするのですから、「本当に気持ち良い寸法」で着ていただきたい。
だから当店の採寸は、お1人1時間かかります。

どんな着付けをしているのか、どこが気になるのか、どんな皺が出やすいのか。
メジャーで測ったぐらいでは、母親が縫っていた時代の着やすさを再現することは出来ません。
お仕立ての、本当の価値を感じていただきたい

当店は、そんな想いで採寸をしています。


洗える仕立て

当店では、木綿や麻だけでなく、正絹も洗えるようにお仕立てすることに力を入れています。
昔、着物で生活していた時代には、普段着の単衣は自宅で洗濯するのが当たり前でした。
戦前の「主婦之友」などの雑誌を読むと、そのことがよくわかります。

洋裁では、服などを縫う時には水通しをしてから縫うのが当たり前です。
戦前の主婦も、普段着を自分で仕立てるときには、当然、水通しをしてから仕立てていたのです。
ところが現代では、普段着の着物も誂えに出します。
仕立て屋は、礼装などの高級品には強いのですが、普段着のノウハウはありません。

また、売る側にとっても水に通すということは、非常に厄介な問題です。
色止め、柔軟剤、防染加工など、様々なごまかしが出来ない。どんなクレームになるかわからない。
だから洗って欲しくないのです。

当店は、このリスクを背負ってでも、洗える仕立てに力を入れていきたいと考えています。
それはお客様に、「より快適に着物を着ていただきたい」という想いがあるからです。
洗えるポリを選ぶのではなく、天然繊維の心地よさを、より身近に感じていただきたい。

そんな想いで、当店は洗える仕立てをご提供しています。

布を引き継ぐ

江戸時代、着物屋というのは、ほとんどが古着屋でした。
庶民が新しい着物を誂えるのは、年に数えるほど。
今とは違って「捨てる」という概念はなく、布は非常に大切にされていました。
一枚の着物を、左右を入れ替えたり裏返したりして、何度も何度も仕立て直したのです。

だから着物というのは、ほどくとまた一枚の反物に戻すことができます。
和裁というのは「仕立て代える」ことを前提にした技術なのです。
当店では「和裁 = 布を引き継いでいくための技術」と考え、これを最も大切にしています。

しかし中には、バレないからと言って布を傷つけることを平気で行っている店もあります。
仕立て代えが出来ない切り方をしたり、キズが残るような道具を使ったりしているのです。
しかしこの現状は上手に隠されており、お客様の目に触れることはほとんどありません。

大切な思い出のある着物。悩んで悩んでやっと買った着物。ひとめぼれした着物。
そんな大切な品々が、傷つけられているのを見ると、辛くてなりません。

大切な品を預けてくださった、お客様の想いを裏切ることがないように。
当店では、使用する道具にも細心の注意を払い、すべて縫製規定にしています。

一級和裁技能士

当店の職人は、全員が国家検定 一級和裁技能士です。
1級の中でも特に腕の良い、上位2割の職人さんだけを採用しています。
同じ1級でも地域によってかなりの差があり、1級なら上手いというわけでは無いからです。

それなのに、なぜ一級にこだわるのか。
それは、「向上心」と「プロ意識」のある人たちが多いからです。

一般的に和裁学校では、在学中に2級を受験しますが、1級は個人の意志に任されます。
卒業して外注としてすでに仕事をしていれば、1級を取得する必要はありません。
そんな状況でも受験を決断し、勉強し直した人たち。それが、一級和裁技能士なのです。

本当に着心地の良いお仕立てをお客様にご提供したい。
妥協した仕事はしたくない。
当店の職人さんたちは、そんな想いに共感して集まってくださった方ばかり。

本当に腕の良い職人だけのプロ集団だと自負しています。


料金設定について

仕立て屋【*ツキヒコ*】のお仕立て代は、ある想いをもって設定してあります。
現在の着物の誂えというのは、飲食店に例えるとすると、こんな状況です。

寿司屋で店員に「上客」だと思われれば料理長が握った銀座レベルの寿司が出てきて、どうせわからないだろうと思われると、冷凍・養殖の回転寿司が出てくる。しかも、それはどちらも同じ値段で、自分では選べない。現在の着物の誂えは、例えるならそんな状況です。

当店の職人は、全員が選び抜かれた上位2割の一級和裁技能士です。
知らない間に海外に出したり、見習いの人が縫ったりすることはありません。

回転寿司が100円で、銀座の寿司屋が150円だったらどうでしょうか。
「むしろ150円って安すぎじゃない?」
そう言っていただける店になりたい。それが当店の想いです。